自転車乗りがGRIIIを買ってみた話

GRIII始めました。


単焦点コンパクトカメラというジャンルの黎明期から現代まで、一貫したコンセプトを貫いてきたGRシリーズ。
長年気になっていた機種、GRIIIをとうとう使ってみた。
これがまた鬼のように期待に応えてくれたのでレビュー記事を書くことにした。


GRはプロのサブ機やスナップシューターとしても活躍してきた実績を持つ。
風景撮影に持ち出せるポケットサイズのカメラということで、当然サイクリングにももってこい。

・「手をかざす程度の感覚」で目の前の一瞬の風景をスナップできる
・一眼の広角/望遠レンズを交換する手間が必要なくなる
・「APS-C一眼 × 広角単焦点」並のクオリティ

そんなカメラが欲しい人にはGRIII、かなりオススメ。


手をかざすだけで撮れる

GRIIIの起動時間は0.8秒。
ローディング画面すらなく、0.8秒後にはもうシャッターを切ることができる。
GRを使う多くの人にとっての最大のメリットがここにある。

現代のお手軽カメラの筆頭はやはりスマホだ。
特に最近の機種は、ちょっとした写真なら本格的なカメラと遜色ない写真も撮れるようになってきた。
レンズやセンサーが小さいことによる不利も、新しい技術やAI処理で少しずつ克服している。
いまや持ち歩かない日はない道具だし、それでスナップが撮れるならそれに越したことはない。
しかし、「現代でコンデジを使うことのメリット」を敢えて考えてみたい。


①「沢山の機能からカメラを選んで起動する」という手間が必要ない

スマホでの撮影も手軽であることに変わりはないが、カメラはあくまで機能のひとつ。
どうしてもスマホのスリープを解除して、カメラ機能を選択するという一手間が発生する。
電源ボタンの2回押し・長押しでカメラを起動できる機種でも、片手で即座にというのはちょっと難しい。
専用の物理ボタンがそれぞれの機能を持っているのもカメラならではの利便性。

②起動時だけ露出するレンズ

スマホのレンズは皮脂などで汚れてしまっていることが少なくない。
空や室内照明に向けてレンズをかざすと画面が曇っていることに気づいて、サッと拭いて撮影に戻る。
画質面に拘りたい人であれば、そういう体験をしたことがある人もいるのではないか。
地味な点ながら「レンズ汚れ問題」はフィーチャーフォンの時代から大きな改善がされていない部分。
起動時だけレンズを露出させる仕組みはコンデジならではのもの。

③バッテリーの節約

旅先で「確実に◯◯枚撮れるデバイス」がスマホと分離している状況には心理的な安心感がある。
スマホのバッテリーが赤くなったから写真は控えめに……と計算する必要が全くなくなるのもひとつのメリット。
位置情報記録などBluetooth連携を使えば多少なりスマホのバッテリーを消費する点には注意。
GRIIIは駆動時間が長いカメラではないが、交換バッテリーが小さいので予備の携帯が苦にならない。


「結局手をかざすだけで撮れるのはスマホも同じじゃないか」と言われるとなんとも否定はしづらい。
しかし、やはり一個目に挙げた起動時間。これが実際なかなか強い。
数年前にリコーのショールームで触ったとき、実はこの使い勝手の良さに気づけなかった。
家電屋で起動と終了を繰り返してみるのと日々ポケットにこの道具があるのとでは体験の種類が異なる。

一方、AF性能がそれほど高くないという欠点もある
全群繰り出し機構やフォーカスブリージングも関わってきそうな問題で、性能向上には物理的なハードルがありそう。
タッチパネルや起動速度の早さで多少の不利は補えるが、GRIIIのAFは暗所だと特に迷いやすい。

撮影シチュエーションが固定されている場合「フルプレススナップ」を活用するのも手だ。
パンフォーカスで風景を記録する動作に慣れると、やることは本当に「手をかざすだけ」となる。


シャッターボタンを一気押しするとプリセットしたフォーカス距離で撮影できる機能。
絞りをF5.6〜8ぐらいにしておけば大体パンフォーカスで撮れる。


一眼のレンズを交換する手間がない

自分の場合、28mm相当の広角単焦点というのは相性が良かったポイント。
ここ数年、ツーリングで使いたいレンズの比重がAPS-Cの「16-85mm」から「55-300mm」へと移っていた。

フルサイズ換算で言うと「24-130mm → 85-460mm」ぐらいのズームレンジ変更。
見かけた動植物を記録したい欲求が強まったことで、一眼は望遠メインにシフトしたこの頃。
ソロライドであれば、広角と望遠を交換しながらのんびり旅をするのもいい。
でも、動物相手や仲間とのツーリング中であればレンズ交換の手間を減らしたい。
必要なときだけ取り出せる広角のカメラがあったら便利だな、と最近は思っていた。


300mmズームで撮った写真。餅は餅屋、望遠は望遠。

その用途でいうと広い視野を高画質で捉えることができるGRはうってつけだった。
28mm相当というのは肉眼の視界をいっぱいに捉え、かつパースの誇張もない画角。
35/50mmクロップを併用すると、対応力は一層高まる。

GRIIIと一眼の望遠レンズを組み合わせることで、基本的にレンズ交換いらずのシステムが完成してしまった。


風景撮影で定番の画角となる35mmクロップ。
ズームとクロップは少し勝手が違うけど、不要な写り込みをカットできる。


一眼側のレンズを中望遠にしてみたり、逆に超ワイドな魚眼にしてみたり。
重量的にも時間的にもレンズに制約のあるツーリングにおいて、確実に選択肢が広がる。

GRIIIxと2台持ち???そっちは沼ですいけません。


「APS-C一眼 × 広角単焦点」並のクオリティ

なるべく機材をコンパクトに纏める選択肢というのはGRだけではない。
身軽さでいえばAPS-C一眼やマイクロフォーサーズの高倍率ズームを使うのもベストに近い選択肢。

ただし画質に拘りだすと、高倍率ズームは多少の欠点も伴う。
ボケ感、解像力、望遠端や遠景の画質などなど。
そんな欠点を飲み込むレベルで便利さを実現しているのが高倍率ズームのすごいところなのだが、やはり設計上多少の無理をしているものでもあるらしい。

餅は餅屋、望遠は望遠。広角は広角に任せたい。
GR + 望遠ズームという運用に至ったのはそんな理由だった。

肝心のGRIIIの画質はというと、ちょっと贔屓目もあるけど非常に優れている。
贔屓目を抜くとしたら、たとえば周辺減光とかが好みに合わない人もいると思う。
個人的には好きなので敢えて補正オフにすることが多いけど、これはカメラ内の補正機能で十分に対応できる。


ボケの自然さや色収差、解像力といった性能は一眼ユーザーから見ても満足できるレベルだと思う。
コンデジでは珍しいAPS-Cという大きめのフォーマットとマクロモードのおかげで、大きく背景をボカした写真も撮れたりする。特に、ダイナミックレンジが大きい景色を撮影するとセンサーサイズの優位性を感じやすい。



今回の記事で欠点についてはあまり触れる機会がなかった。
暗い場所や動きモノに対してAFが強くない、防塵防滴ではない、細かい動作の安定感などなど。

最終的には「使ってて楽しい」の一言に尽きるので、それを結論としたい。



おわり〜









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