【機材紹介】K-1 MarkIIとフルサイズ一眼レフの話【生えた】

時は令和三年。


市場には高性能最新ミラーレスカメラが跋扈し、旧態依然たる一眼レフ機は各社のマウント総転換を許していた。一眼レフという共通呼称を喪失した民が「一眼カメラ派」と「レンズ交換式カメラ派」に分裂し熾烈な争いを繰り広げた歴史は万人の知るところである。

争乱の中「一眼レフ」の旗を天高く掲げ、 滅び トレンド の運命に抗うメーカーが存在した。後のペンタプリズム大王朝の礎となったPENTAXである。


またしてもカメラの話題。
遠出の頻度が少ないので機材の話題が多くなるのは仕方なし!
今年も今年で色々あった中、普通に個人的に忙しくしていただけだったり。

【機材紹介】PENTAX KPと自転車旅の話

直前の記事では約1年使用したAPS-C一眼レフ PENTAX KP のレビューを載せていた。
相変わらずサイクリングとの相性は抜群。防塵防滴、強力な手ブレ補正に暗所性能、フィールド向きの機能性など文句なし。

しかしながら、筆者はAPS-C肯定派であってフルサイズ不要論は唱えていない。
機材選びに最適解はあっても○✕形式の正解はないのだから。
APS-C一眼レフに個人的な最適解を見出した人間がたどり着く結論はひとつ。

「よーし……フルサイズも使ってみるか!!!!!!」


来年、自転車でデジタル中判を担ぎ始めないことを祈るばかりである。



というわけでようやく導入したFF(フルフレーム)デジタル一眼レフ。
CanonやNikonのフラッグシップ機に代表されるようにプロ向け製品を擁しながら、2021年現在ではミラーレスマウントのプロ機が台頭しじわじわとニッチ市場化しつつあるジャンルでもある。

PENTAXが2016年に出した初のFF機「K-1」の後継機、「K-1II」。
同ブランドからは新型APS-Cが今年出たばかりだしフルサイズの新型はまだ先だろうということでこのタイミングの導入。
(この記事を書く間に開催された公式イベントでも、後継機はまだ企画前の段階とのこと)

導入理由はいくつかあって

・そのときのテンション(重要重要重要)
・正直PENTAXのカメラで一番楽しそう(大事大事大事)
・オールドレンズ、FF用レンズをフルで使ってみたい
・PCを買い替えたのでデータの重さが気にならなくなった


こんなところ。

KPに求めていた「高い機動力で風景を切り取る性能」には十二分満足していて、だからこそ大型のフルサイズ機があったとしても棲み分けられるだろうなと感じていた。KPのコンパクトボディはサブ機としてバックパックに入れてもまぁ問題ない(ガチめの登山だと流石に重い!)。
実際に使ってみた感想としては概ね想定通り、K-1でなければ撮れない写真と、KPでなければ逃すシャッターチャンスがあった。
そして描写性能で評価するなら、K-1の破壊力はやはり一皮剥けている。
とりあえず2000枚ぐらい撮ってみたので、実感したポイントを書いていきたい。

2022年11月時点での評価
「K-1IIの後継機は出るのか?」という議題がPENTAXユーザーの間でしばしば挙がっているこの頃。
結論から言うと「全く検討してない訳ではないけど当面はK-1IIで頑張る方針」ということのようだ。
2021年11月時点で示した次期フルサイズ機の方針は「光学ファインダー&5000万画素以上で画質性能アップ / 2500画素高速 / 2500万画素マニュアル専用仕様 / K-3IIIの技術を落とし込んだ2500万画素」の4案。
まだユーザーのニーズを確認している段階なので最低でも数年先と思っておくのが吉だろう。
それぞれ「画質優先 / 派生機 / マニュアル原理主義写真機 / 欲張りセット 」といったところ。
K-1IIのファインダーが更に明るくなってAF性能もより向上すると嬉しいので、個人的にはD案を推したい。
話は逸れたがいまK-1IIを購入して即後継機が発売、という可能性はだいぶ低いように思える。
Eマウントに続いてZマウントのミーレスフラッグシップ機の台頭もあり2022年ではよりマニアックな存在に寄りつつある一眼レフ。
利便性はさておき「物理的な撮影体験」という優位性は案外揺るがないと実感しているので、ぜひともファインダーの性能向上とバッファを始めとするストレス軽減は応援したいところだ。
1年経過してなおK-1IIは「触っていて"良いカメラを使っているという体感"を刺激される機材」であることに変わりはない。

Kマウントフルサイズ機の気に入った部分

◎ 3600万画素+リアレゾ撮影の解像力

まずはなんといってもここ。APS-C機のK5II(1600万画素)からKP(2400万画素)に移行した際も情報量の多さを実感していたところでさらに1.5倍相当のピクセル数。大は小を兼ねる教の教義によると、画素数とセンサーサイズはいくらあっても良いとされる。

リアレゾなしでも十二分の解像力。カメラというより視界スキャナー。
smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR
1/160s f/6.3 ISO250

近接撮影でもないのに鱗粉ひとつひとつがしっかり解像されていて大変よいとされている。

もちろん画素数を求めていけばさらに高解像なカメラはあるけれど。K-1はAPS-Cクロップで1500万画素、つまりKPよりも画素ピッチは広くなっており高画素化と高画質化をバランスよく達成していると言える。実際撮影データに触れてみてもそう感じた。
筆者は写真をプリントする機会は滅多にないのでここまで来るとオーバースペック気味でもあるけど、クロップなどの利便性は高い。一昔前の同社のAPS-C機のフル解像度と変わらないのだから通常用途には十分だ。

遠景の解像もしっかり強いDFA100マクロ。フルサイズでかなり使いやすい単焦点。
smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR
1/30s f/8.0 ISO200

また、KPでも取り上げていたリアルレゾリューションシステム(以下リアレゾ / RRS)。
他社でも採用されているピクセルシフト撮影と異なっているのは「実質の画素数を増やす」ではなく「ベイヤー配列の色補完を完全なものに近くする」という目的であり、これによって画素数は変わらないにも関わらず細やかな線が滲むこと無くくっきりと描写される。

4枚の画像を合成するので暗所ノイズが格段に減るのも利点。完全に静止した風景に特化していて動体補正を扱うには専用ソフトが必要だったりと使い勝手は限定されるが、K-1は三脚を据えてじっくり撮りたいカメラということもあってKP以上に活用する場面は多く感じる。

右がRRS。画素補間が無いぶん細い線までシャープに描かれ暗所ノイズにも強くなるのはおなじみ。
画素数を増やすピクセルシフト機能が良いと言う人もいるけど、方向性が異なるだけなので個人的にはこの解像力がすごくよい。
KPでも満足いく解像力とはいえ、より緻密な世界。


一方、RRSについてもう少し頑張って欲しかった部分。
初代K-1からアップデートされたK-1IIの売りである「手持ちリアレゾ」だが、これに関しては微妙。いや、、、はっきり言ってしまえば今はまだ効果を実感できていない。
本家のRRSはセンサーシフトで1ピクセルだけずらした4枚の画像を合成するのに対して、手持ちリアレゾは手ブレとシャッターショックの微細な揺れを利用するので仕組みが異なっている。シャッタースピードや感度を変えたり等倍で比較したり純正ソフトで確認したりと大体のことを試したものの、手持ちリアレゾで解像力が上がると断言できる写真はまだ得られていない。

最新機のK-3IIIで手持ちリアレゾが非採用となっていたことからもこの機能を活かせる場面はかなり限定的で、オマケぐらいに思った方が多分いいのだと思う。手持ちリアレゾに多少期待しながらK-1ではなくK-1IIを選んだ身としては肩透かしに思えたが、本命は三脚リアレゾの解像力なのでマイナス要素というほどではない。

手持ちリアレゾについて修正。
こちらの機能はLightroomでの表示が非対応で、単に画面上反映されていないだけだった。
PENTAX純正現像ソフトのDCU5で確認をすると一定程度画質の向上が見られる。

画質の向上度合いは、例えば本家リアレゾがいくらかシャープになり高感度ノイズも1段分ほど低減されるのに対し、手持ちリアレゾはその5割ぐらいの体感。
一方容量はRAWで普通に100MBを超えるので、やはり常用するにもいざというとき使うにも絶対的な優位性には欠けると思われる。
撮影時の処理時間は置いといてこのファイルサイズを軽く扱える環境でDCU5の操作に抵抗が無ければ(鬼門)三脚リアレゾの簡易版が可能であるというのは確かにちょっとすごい。
ピクセルシフト撮影の課題がやはり壁なのでまあ常用は考えないほうが良さそうだ。

◎ 高感度耐性

KP、K-1II、K-3IIIと近年のPENTAX一眼レフでは高感度領域の進化が目覚ましい。
これを下支えしているのはアクセラレーターユニットと呼ばれる回路で、開発部は詳細を明らかにしていないが特許まわりを調べると「撮影条件に応じた係数を加えたノイズ減算用画像を利用して、短時間でデータからノイズを取り除く」という類のものらしい。ノイズリダクションされたRAWデータはRAW(生)ではないという異論もあるらしいけど、ノイズが乗っているデータより純粋な信号に近いものが得られるならむしろいいのでは、という個人的見解。
実際の描写はというと大変によろしい。
3年前(K-1は5年前)のカメラにしては、などという枕詞は全く不要。

KPより強い感じはするけど、K-1IIもISOの個人的許容値は概ね一緒。つまり良い。
smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited
1/50s f/2.0 ISO1600

ノイズをほぼ気にせず使えるのはISO1600まで。拡大してじっくり見る用途でなければ3200、ぱっと見で違和感がない6400、ブログのサムネサイズなら12800でも不満なし。25600は緊急用となる境目の感度で、51200以上はカラーノイズが目立ち始める感じ。もちろん撮影条件や被写体にもよる。とはいえあとから何段も露出を持ち上げたり被写体ブレするぐらいなら感度はガンガン上げた方が良いので、個人的にはISO10万以上が拡張感度という感覚で使っている。

これは機械式シャッターだけど、重箱の隅をつつくならKPの方が電子シャッターの使い勝手は良い。
とはいえフリッカーや動体歪みの問題があるから基本メカシャッターしか使わない。
smc PENTAX-M 50mm F1.4
1/8000s f/1.4 ISO6400


ちなみにPENTAX全体のノイズは解像感を重視してかざらついた粒状になる傾向で、風景撮影では細部が潰れにくくて好みに合っている。逆にポートレートを重視したい人にとっては好ましくない出方かもしれない。もちろんポートレートは高感度性能より十分なライティングが命だし、現像ソフトの後処理は問題なく機能する。敢えて厄介な条件で撮影するのでなければ全く問題ないと感じる。




 


ISO感度  3200
  6400  / 12800
25600 / 51200

◎ ボケを活用した表現力

自分の撮影目的(主に風景の記録)では必須ではないし被写界深度はむしろ深いほうがいいけど「遠景までボカさずクッキリ写したい → F値を大きくする」は容易でも、「ボケ量を大きくしたい → F値を小さくする」は限度がある。この点はラージフォーマット(m4/3 < APS-C < FF < 中判)の方が相対的に対応できる幅が広く有利な要素。ボディが大型化するデメリットもあるけど、大はそれなりに小を兼ねる。

smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited
1/640s f/1.8 ISO800

よく「フルサイズはボケやすい」と言うけど若干語弊があって
「撮影素子が大きい = 同じ画角でもレンズの焦点距離が長くなる = ボケが大きくなる」
と言ったほうがより正確な説明になる。広角レンズより望遠レンズの方がよくボケるという現象はどんなフォーマットのカメラでも共通だけど、センサーサイズが異なると同じ画角のままボケ量が変わってくるということ。極端な例を上げると、スマホのカメラなどは小型センサーに対応した非常に焦点距離の短いレンズを使用するのでボケ表現は苦手となっている。


上の4枚はフルサイズ機 & 28mm(左) / 18mm(右)のレンズでそれぞれ撮影してみた例。
28mmはフルサイズのまま、18mmはAPS-Cクロップ機能で撮影している。APS-Cの35mm判換算の倍率はキヤノン以外だと1.53倍で、18×1.53=27.54とほぼ28mm相当の画角になる。

絞り設定は上段がF4、下段がF8。F値が同じだと28mmの方がよりボケ量が大きく立体感が出るのが分かると思う。フルサイズはこうした印象的な作品らしさが出やすい一方、記録として風景の情報(どんな植物が生えているか、建物の壁がどんな素材かなど)を残すならAPS-CだとF11ぐらいで足りそうだけどフルサイズならF16ぐらい欲しいということになる。最初の方で書いた通りラージフォーマットほど表現の幅をつくりやすいというだけで、ボケてる写真が望ましいかは使う人の用途や目的による。



同じく28mm / 18mmのレンズを使用したままF値だけ変えてみる。
フルサイズ側をおよそ1段(F4→F5.6、F8→F11)絞ると概ね似たような被写界深度になるのが分かる。例えばフルサイズの大口径標準レンズ(50mm F1.4)と同じような表現を得るには50÷1.53≒33、1.4÷1.4=1で、33mm F1というスペックが必要となるように、相対的に小さいセンサーで被写界深度を浅くするのは一筋縄でいかない。これらの特性の違いから「フルサイズはボケやすい」とよく表現されるのだ。

これだけ見るとクロップ機能でAPS-Cレンズも使えるフルサイズ機はAPS-Cの上位互換のようにも感じられるけど、実際はAPS-C専用の小さいレンズを活かすなら専用ボディが適しているし、APS-Cの範囲で2400万画素ぐらいの画質を得ようとするとフルサイズ時で5600万画素という普段使いのハードルが高いデータサイズの高画素機となってしまう。なのでやっぱり適材適所。もちろん最初に書いた通り「大はそれなりに小を兼ねる」というのが前提。

◎ 35mm判レンズのフル活用

フルサイズ機を使う以上はこれが醍醐味のひとつ。
現時点で使っているフルサイズ用レンズは以下の通り。

・HD PENTAX-D FA 28-105mm F3.5-5.6 ED DC WR
・smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited
・smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR  
・smc PENTAX-M 50mm F1.4
・smc PENTAX-M 50mm F1.7
・Sigma APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO



フルサイズ/APS-Cレンズそれぞれの展開や互換性はメーカーの方針に大きく左右されるけど、Kマウントはマイナーアップデートをしながらも基本的な仕様は50年近く変わっていない(良くも悪くも)。フィルム時代のオールドレンズを試してみるも良し、FA Limitedのような銘玉と呼ばれるレンズに挑戦するも良し。
後述するラインナップの少なさこそあれ、クロップモードの使い勝手も良くKマウントレンズなら世代を一切問わず全て使えるのでレンズ遊びの幅は思った以上に広いものとなる。

特にマニュアルレンズは不便な印象を持たれがちだけど、フォーカスリングの操作感はしっかりしているものが多くて案外苦にはならない。露出は勘で合わせるも良し、PENTAXの場合は全機種共通でグリーンボタンという露出操作系の補助ボタンがあり、Mモードで使用すると一発で適正露出に合わせてくれる。マニュアルレンズでの速射もなかなか楽しい体験。

smc PENTAX-M 50mm F1.4
1/250s f/1.4 ISO100


◎ 内蔵GPS & 気軽な天体撮影

フィールドカメラとして位置情報を記録できるメリットは少なくない。
なんでもない風景の撮影地をあとから確認したり、登山で出会った景色のポイントをマップで調べることもできる。スマホのGPSログが当たり前となった時代、カメラで撮影した写真でも普通に搭載して欲しいと感じる機能でもある。PENTAXでGPSを内蔵している機種はK-1/K-1IIとK-3IIのみで、他機種ではホットシューに装着する外付けユニットやスマホ連携を必要とする。


そしてPENTAXが売りにしているアストロトレーサー
ボディ内手ブレ補正のセンサーシフト機構を利用して、長時間露光でも天体を追尾する赤道儀のシステムをカメラに内蔵してしまおうという代物。こちらもGPS非内蔵の機種では「O-GPS1 / O-GPS2(発売予定)」という外付けユニットが必要となるが、K-1/K-1IIはアクセサリなしでこの機能を利用できる。方位や角度は機械任せなのでキャリブレーションや撮影にコツが要るものの、サイクリング装備でも明るい星空が撮れるのはPENTAXユーザーの特権かもしれない。

え、明るい広角単焦点が少ない?そこは伸びしろということで。

smc PENTAX-DA 10-17mm F3.5-4.5 ED [IF] Fisheye zoom
60.0s f/4.5 ISO1600 17mm

ちなみにAPS-C最新機のK-3 MarkIIIでは新アストロトレーサーと仮称されている機能が実装予定で、こちらはなんとGPSの無いK-3IIIをファームアップのみで天体追尾に対応させてしまうのだという。予備撮影 → 星の移動距離と中心点を検出 → 本撮影 と理屈はシンプル。これがスタンダードになるとフルサイズ後継機もGPSは内蔵せず、位置情報はスマホとBluetooth連携、星撮りもこの機能で対応することになるのかもしれない。電波干渉するマグネシウムのフル外装化が出来ない点がメーカー的にGPS搭載をしたくない事情らしい。


◎ 多くの機能を凝縮した操作系

メカメカしいゴツさと独自機能のオンパレード。
キヤノンやニコンのフラッグシップ一眼レフのような超重戦車というよりは独特なフォルムと無骨さを併せ持った駆逐戦車の様相(伝われ)



まずはK-1の代名詞ともなっているフレキシブルチルト液晶。
通常の三軸チルトと異なり、これがいたってシンプルな操作で面白いぐらいグリグリ動かせる。液晶を保持しているのは4本の鉄製アームで、通常のチルト液晶に必須の関節軸が存在せずちょっとやそっとのことでは壊れないという確信が持てる頑丈さを発揮している。自己責任だがチルト液晶画面を持って本体をブラブラさせても壊れないカメラはおそらくK-1ぐらいだろう。

そして本体各所に内蔵されたLEDライト。PENTAXはピカピカ光るあんなカメラやこんなカメラを作っていたのでつい色物に思われがちだが、特に天体撮影では実用的な機能。先日星景撮影をした際は雲の流れに応じてレンズ交換で画角を調整していたが、周囲で撮影している人に全く気兼ねすることなくマウントやボタンの位置を把握できた。

デュアルスロットをはじめ信頼度の高さに加えて物理ボタンが多く配置されており、KPに引き継がれた機能ダイヤルなど様々な機能をまとめあげた操作系には初めてでも慣れるまで時間はかからなかった。強いて言えばKPの機能ダイヤルに設けられているカスタム枠がK-1に無い点ぐらい。KPでは機能ダイヤルをもっぱらISO感度用にしているけれど、K-1のISO操作は物理ボタンで事足りるのでクロップモード切替えをもっぱら使用している。

細かな点として、モードダイヤルのロックを無効化できるレバーが非常に有り難い(機種によってモードダイヤルの中心にはボタンがあり、モードが不用意に変わらないようここを押しながらでないとダイヤルを回せない機種がある。KPもそう)。撮影モードはユーザーモード含め適宜使い分ける派で、特にユーザーモードからM/TAv/Av/Tvに切り替える際はB(バルブ)モードが間にあるため、被写体に応じてロック解除しながらダイヤルを回すのは些細な操作とはいえ煩わしいのも確か。目視する癖があることもあってモードダイヤルロックは個人的には無用の長物なので、選択肢としてロック解除できるのは地味に重要。K-1のこういった細やかな気配りに設計の気合を感じたりする。

クロップはデータ容量節約や連写枚数上昇のメリットもあるけど
個人的には構図を最初から決めて撮りたいのが大きい
smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR
1/200s f/8.0 ISO100

Kマウントフルサイズ機の課題

KPとK-1IIを使用してみて好感が持てた部分は上記の通り。
「大は小を兼ねる思想」でいけば総合的にK-1IIが勝るように思われるところだけど、実際長所 / 短所の落差はKPより大きいと感じた。つまり人によっては扱いづらいということ。これはK-1/K-1IIが同社初のフルサイズ機ということもあるし、好意的に捉えれば用途に特化しているとも言える。

△ レンズの選択肢

これはよく言われることだけどPENTAXはそもそもの開発リソースが他社より小さく、デジタルフルサイズ機の発売から5年が経った今でも現行製品の純正フルサイズ用レンズ(D-FAレンズ)のラインナップは他社に比べると見劣りする。 APS-C用レンズは一部更新が滞っているものの大抵の人が困らない充実度なだけに、同じレベルの選択肢はやはり期待してしまう。具体的には明るい広角単焦点、携帯性の良い望遠ズーム、F4通しの高性能ズームなどラインナプの穴が見受けられる状態。DFA 21mm Limitedの発売で救われた広角難民の噂は少なからず耳に届いていた。

一部OEMこそあれ近年のD-FAレンズは質についての妥協は無いらしく、ひとつひとつのレンズの写りに対する評判はすこぶる良い。一番スタンダードな小型ズームとなるDFA28-105mmもAPS-C用のミドルクラスレンズと比較して同等以上の品質だった。携帯性重視のAPS-C機との棲み分けもあっての方針だと思う。


公式サイトより2021年現在の現行製品。左がAPS-C/フルサイズ、右はフルサイズ対応品。
(引用元:https://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/lens/k/)

またシグマ・タムロンと2大サードパーティーが撤退しているのでお手頃なF2.8通しズームなども中古の旧製品のみとなる。最近発売されたタムロンの高性能高倍率ズームなどの対応に関してももちろん蚊帳の外で、話題の最新ガジェットをどんどん試したい人にとっては不満になりやすい部分。しかしながら純正レンズの相場感は他社より安めかつHDコーティング採用以降のレンズは性能の安定感も一層増していて、その点は良い。

"Limited"は限定品という意味ではなく「特別設計」といった意味合いのPENTAXの看板シリーズ。
「定番どころの焦点距離やスペックに拘らず、収差も描写の味に活かす」ことで小型高性能を両立させている超ロングセラー品。
使ってみるまで宗教だと思っていたけどよく写るというのは本当だったし正直驚いた。なお宗教です。

これらを踏まえてK-1を活かせる運用方法を考えると
・Limitedレンズなどコンパクト単焦点を複数持ち歩くスナップ・風景撮影
・重量は増えて構わないので大口径のスターレンズでどっしり構えた撮影


に二極化すると言えそう。
散歩とサイクリングがメインの自分にはスターレンズの導入は装備的にもお財布的にもちょっと気が重いので、特別な理由が生まれない限り前者。ちなみにフルサイズ一眼レフの嵩張り具合を加味しても、コンパクトなレンズを装備したK-1でのスナップ撮影はかなり楽しい。
初めての一眼レフでフルサイズから入りたい場合、用途をある程度絞っておかないとKマウントが後々合わなくなる人は多いと思う。

フルサイズでもケラれないDAレンズを使うのもひとつの手段ではある。
メーカー公認のAPS-C用望遠単焦点以外にも、標準〜望遠にかけて結構使えたりする。
画像はDA Limited最薄の40mmで撮影(流石にF11まで絞っても四隅は乱れる)


△ やっぱり大きい

K-1II自体はフルサイズ機として特別大きいカメラではないものの、厚みはそこそこあって重量もボディ単体で1kg近い。少しでも軽くコンパクトなシステムにしたい人には不向きなカメラだと思う。一方でカメラ自体のメカ感や迫力はミラーレス機になかなか無いもので、むしろこれぐらいが好みという人もいそう。グリップ感のおかげでKPに大きめのレンズをつけたときより持ちやすいことも多い。

300mmクラス望遠ズーム同士で比較してもちゃんとデカいフルサイズ用レンズ。
ただPENTAXの十八番でもあるLimited系や100mmマクロはコンパクトでいてよく写る。
個人的にはそっち系のレンズを増やして楽しみたいカメラ。


△ 動体 & 連射が不得意

これはKPのレビューでも書いた点だけどPENTAXは最新機のK-3III以外は連射性能全般にやや難がある。これも用途次第で、風景メインの自分にとってはほぼ全く問題にはならない。

もちろんいざ動体撮ろうとするとわりかし苦戦する。
あくまで相対的な話とはいえ、無意識に避けてしまいがちなのは否めない。
Sigma APO 70-300mm F4-5.6 DG MACRO

1/3200s f/7.1 ISO6400 300mm


ただしバッファ転送の速度は明らかに他の機種より遅く、特にデュアルスロットでRAW同時記録となるとシャッターが切れない待ち時間に悩まされる場面が無いでもない。APS-Cクロップ時の連射枚数は50枚程度なので既存のAPS-C機より高速化されているのは確かだけど、なんせメインで扱うのがフルサイズのデータサイズなので実用上やや支障がある。
K-3IIIでは設計の制約からかとりあえず片方のスロットのみUHS-II対応となったが、K-1II後継機が出たらその辺は克服して欲しいところ。


✕ 動画(以下略

おい!!動画の話はヤメロ!!!!
上限がフルHD画質、センサーシフト手ブレ補正ではなく電子手ブレ補正など色々難しい。そしてKマウント用レンズはボディ内モーター駆動で動作音が大きいものも多く、そうしたレンズでAFを合わせるとバチバチの大音量で記録される。

PLMモーター内蔵レンズなら音問題もほぼ気にならないのだけれど、現在発売されているPLM搭載レンズは2本ともAPS-C用。PENTAXで動画を撮るなら唯一4Kに対応しているK-3IIIかバリアングル液晶 / ハイブリッドAF採用のK-70の方が比較的活かしやすいと思われる。FA Limitedで撮った動画とか雰囲気あっていいんだけどなあ。MF使用で音声要らない動画なら遊べるかも。


滅茶苦茶気に入ったから記事にした(結論)



報告は以上です。

メリット・デメリットの観点で書き連ねてみて短所もいくつか挙げたけど、相当気に入ったものしか記事にはしない方針なのでK-1IIも一眼レフという趣味を楽しめる人に積極的にオススメしたい道具だった。レビュー記事は使ってみて趣味性が高すぎたり、目に余るような欠点があるものは書こうと思っても全然筆が進まない(比較的最近のだと風に弱すぎたトイドローンとか耐久性に難ありのフロントバッグとか)。今回の記事に限らず、レビュー記事を書き上げているものは個人的な評価として星4.5〜5ぐらいはあるものばかり。

しかしカメラを趣味として始めたい人が真っ先に選ぶのに無難とは言い難い選択肢なので、K-1 MarkIIが苦手とする撮影ジャンルは敢えて明文化しておくことにした。スポーツ撮影や子供など激しく動く被写体に対しては数を撮って当たりを引こう(撮れるっちゃ撮れる)。

PENTAXのカメラを愛用している理由に「少数シェアゆえ自分なりの正解を見いだせる手探り感」が好きという、ともすれば天の邪鬼な精神があるのも確か。ミラーや光学ファインダーを搭載したカメラは今後趣味性の高い道具になっていくのは間違いなく、メカならではの特徴を「不便」「贅沢」どちらの形で受け止めるか次第で相性は変わってくると思う。そして最近のPENTAXのカメラはフィールド向け、風景撮影向けという軸は維持しつつも撮影体験そのものを楽しむという方向にシフトしていて、K-1/K-1IIも写真の遊び方をさらに広げてくれる道具だった。

あ、リコイメさん、KPIIもそのうちいつかきっと出して下さい。お待ちしてます。




おわりー

コメント