津軽と下北の最端へ / 下北編


前回訪れたときは初めての仏ヶ浦を巡った下北半島。
今回訪れた場所は再訪がメインでしたが、およそ10年越しの景色でした。
今日は、白神ラインを抜けた西海岸から一気に東へ輪行します。


恐ろしい夜が明けました。
みなさんおはようございます。

場所は日本海に面する青森県西端、深浦町の民宿汐ヶ島。


泥のように眠っていたもので何も覚えてないけど、女将さんの支度の音で目が覚めたような。
7時頃に起きていそいそと荷物をまとめます。


予想通り!な朝食の盛り。

実際のところコレがとても助かる。
なんせ最寄りの商店まで軽〜〜〜く20km近くあるし。
昨日買った補給食はとっっっくに食べ尽くしていたから、朝ごはんが最後の生命線。

実は記事を書いてるとき「深浦駅周辺に初のコンビニ!」というローカルニュースがありました。
ただし上に書いた「20km離れた最寄りの商店」というのが深浦駅前で、コンビニもその辺り。
つまり相変わらず、白神ラインを抜けた先に補給スポットが皆無なのは相変わらずなのです。そういうことです。

って、食卓にはラップに包まれたおむすび。
何も伝えていなかったけど、お腹を空かさないよう気を遣ってくれたみたい。
たすかりますたすかります。

創英角ポップ体最高

コーヒーはあるだけ飲む人間なのでモーニングサービスも嬉しい。

スマホで地図とか電車の時刻とか見ながらgkgk
十二湖も久しぶりに行きたいんだけど、どうしたものか……


窓の下にお猫様の住居がありました。
なかなか味わい深い猫ハウス建築。



食料、身支度、パッキング、ルートヨシ!

昨日心配をかけたせいもあってか宿のお父さんには
「家に無事に戻ったら電話しなさい」とまで言われました(ノ´∀`)

とてもとてもお世話になりました。


宿を出る間にもなぜか増えてる水とりんご()
これだけ食料を確保すれば全然飢える気がしないね!

時刻は10時、電車の時間まで近場を散策するとします。


 

この辺、というか深浦は岩が織りなす風景が多い場所です。
マップをチラ見するだけでも名前つきの岩がゴロゴロあります。ネームド岩です。
ガンガラ穴、象岩、かんざし岩。

ひとつひとつ見ていきたいとこですが、ちょっと時間が足りない模様。
下北に着くだけなら昼過ぎの電車もアリだけど、今日は現地入りしてすぐに寄りたい場所があるので11時台の臨時快速に乗る必要があります。

(それとブログ的メタに触れると、下北編も2泊3日を纏めたので結構長いです)


海岸を去ってからすぐ十二湖駅へ!

もう1時間早く起きれたらもうちょい寄り道できたかな。
十二湖、青池以外まだ見てないので改めて立ち寄りたいですね。
汐ヶ島のお父さんからもかなり詳しく見どころを聞けたので、次回思いっきり探索します。


ジェナさん、石と泥と闘った跡。

臨時快速「リゾートしらかみ」はどちらかというと観光列車なので輪行袋を置けるかちょっと心配。
それも杞憂で、横置きの袋とホイールバッグは車内の広いスペースに置かせてもらえました。


それなりに長い輪行旅だけど、半日ぐらいは全然慣れっこ。
青森のほぼ秋田側だったので、隣県を経由して東能代で乗り換えました。


十二湖駅-(五能線)-東能代駅-(奥羽本線)-青森駅-(青い森鉄道)-野辺地駅-(大湊線)-下北駅

うん、自分でも書いててよく分からないです。
ダイヤとか全然知らなくてもアプリひとつで検索できるのはいい時代。
十二湖駅はきっぷ販売をしていない駅で、車内でルートを伝えて発券してもらいました。

車掌さんの発券が大変そうだったとか。


およそ18時。2年ぶりの下北駅に到着!

ディスク車の輪行も大分こなれて早くなってきました。
機械式だからなおさらラフに扱えるというのもあったりしますが。

この街には2泊3日の滞在、むつ市でちゃんと宿を取るのは初めてだったり。

初日は素泊まりなので夕食に駆け込む必要もなし、ちょっとだけナイトライドします。



むつ市街のどこからでも見える標高878mの釜臥山
山頂付近の展望台まで、夜景を求めて出発。


釜臥山の山頂から飛び出しているのは煙突ではなく、自衛隊のレーダーですね。
名前通り釜を臥せたような山体と相まって特徴的な見た目です。
この町で暮らしてる人の目には、毎日映ってる日常なんだろうなと。

かまふせパノラマラインと名前のついたこの道、ちなみに街灯が全く無いです。
車通りもほとんどないのでガードレールを挟んで動物の気配がすごい!

1kmに1回くらい草むらから音がします。カモシカかサルかな。


カーブを抜けるたび、山頂でライトアップされたレーダーが道標のように待ち構えている。
夜のヒルクライムでこれだけ山頂との距離感が掴めるのも、初めての体験でした。

パノラマラインを抜けると、物々しい有刺鉄線つきの鉄柵。
自衛隊が管理している敷地なので、出入りできるのはこのゲートの開門時間だけ。
ちなみにこの道自体、1年の半分は冬季閉鎖されていたりします。

守衛さんに手振りで挨拶して、ゲートからもうちょっと上の展望台へ。


これが見たかった!

光のアゲハチョウとも呼ばれるむつ市の夜景。
肉眼でよくよく見ると、陸奥湾から半島を挟んで太平洋の水平線が見渡せます。
一瞬だけ顔を覗かせていた月は、すぐに上空の雲に姿をくらませました。



市街地まで一気にダウンヒルして民宿「鈴屋」に到着。



むつでは土木や発電所関連の仕事で長期滞在する人が多いらしく、客用の洗濯機があったので幸いとばかりに借りました。
GoProの3m自撮り棒にはこういう使い方もあるのです!

きょうは輪行旅と夜景ライドで1日を使って、ささっと布団にログインすやり。



お布団ログアウト!

自転車は例によって玄関先に置かせて貰えました。
慣れた案内だと思ったら、下北半島ロングライドなどのお客さんが利用することもあったんだそう。
下北半島ロングライド…山岳込みのコース310kmを14時間で完走する素敵なライドイベントです。私は出ません。


下北の観光案内マップもめちゃくちゃ頂いた。

ていうか、自転車向けだけでも結構出してるんですね。
バイクパッキングだとこういう紙束どうやって持ち帰ろうかな?と悩むんですが、今回うまい収納を編み出したので最後に紹介します。


素泊まりなので、朝食も外で。
鈴屋からすぐ通りへ出たところにすき家がありました。



むつ市の中心はコンビニや飲食チェーンがなくて困ることはそうないです、でもちょっと町を離れると例によってほとんど補給が期待できないので、食料は買い込んでいきます。

腹ごしらえも整えて出発!




むつ市のちょっと町を離れるたときありがちな風景!すき。

あえて国道ではない裏道ばかり通ってました。
レンタカーだとこういうところ、対向車とか気になって避けたいとこですが自転車らしくフラフラ。

以前も書きましたが青森なのに北海道で、でも北海道じゃないんですよね。下北。


海自の電波送信所。
戦後までは滑走路だったそうですが、どうやら本格的な基地としては使われていなかったようです。
地図で見ると時代の名残がよく分かります。


  

まだまだ北東を目指します。
下北駅から尻屋崎はほぼ片道30kmぐらい、信号も無いのでゆったりペースです。

そろそろむつ市を抜けて東通村。
紛れもない本州北東の最端地です。
自転車では初訪問!


海沿いのはずが県道からは海が見えません。
防風林なのか、高い木々に阻まれています。
青森で風の岬として知られるのは龍飛ですが、尻屋崎も特に冬は厳しい風にさらされる場所。
というのは後から灯台の人から聞きました。


荒涼さを増していく景色にそぐわない工場地帯を抜けると岬まであと僅か!
鉱山とセメント工場が隣接しているようで、奥にそびえるプラントの無骨さが際立ちます。

こういう場所は大型トラックの量などが気になるところですが、あまり記憶に残ってないということは気にならないレベルだったんだと思います。
積雪地の幹線道路は除雪を考慮して広めに設計されてる区間も多いので、路面が余程荒れていなければ夏場は快適です。
路面が気にならないのはタイヤ幅も多少貢献しているところでしょうか。


このゲートから先が寒立馬(かんだちめ)の放牧地です。


寒立馬というのはかつて野放馬(のはなしうま)と呼ばれていたこの土地の農用馬。
一時期9頭まで激減したものの、四半世紀かけて40頭ほどに回復しました。

岬であり放牧地でもある尻屋崎は起伏のある広大な森と草原です。
馬の群れがどこにいるかは調べようがないので、馬に会えるかは運次第なとこあり。


今日はいきなり会えました。馬でっっか!

ゲート脇すぐそばのフェンスに囲われた区間に3頭。1頭は仔馬。
なにか理由があって群れから離れているんでしょうか。
挨拶してからゲートの向こうへ。


曇り空で若干帰りの天気が気になります。
けれども風も気温も穏やか。



RPGのマップさながら、高山のように荒涼としている尻屋崎。
時速10kmくらいで辺りをキョロキョロしている内に岬へ到着しました。



尻屋埼灯台!!

実は2019年6月に大規模改修を終えたばかり。
白神ラインも釜臥山も5月下旬には開通していたけど、ここは工事中だったので見送っていたのでした。

料金所の内側から。入り口のゲート、たまに馬が入ってしまうそうです。

これは現地を訪れるまで知らなかったんですが、改修後は一般公開が解禁されていました。
ここを登れるとは!待ってた甲斐がありました。
128段の階段を上がっていきます。


改めて調べてみると、常時登れる灯台って実は少ないんですね。
たまたま一般公開のとき龍飛岬を訪れていたし、夜に訪れた犬吠埼灯台も見学者向けの看板が立っていたので、一般的なものだと思っていました。


巨大なレンズを間近で拝むことができました。

全国でも15基。
高いところは好きだし、旅先の灯台が登れるか今度から気にしてみようかな。



眼では見えないけど、とにかく自分より前に本州が全部ある!
そんな実感が湧く眺めでした。

しかし……見渡す限りどこにも馬がいない。
日によっては灯台近くにいたりするらしいけど、今日はどこにいるんだろうか。


岬を散策する前にカロリー補給!
シンプルな煮干系醤油ラーメン、いちばん胃袋に落ち着きますな…。
お麩が入ってるのは青森あるあるです、何故か麩が入ります。

この辺の補給地点は道中いくつかの自販機と灯台近くの売店のみ。
お土産に寒立馬のピンバッジを購入しました。

 

 

林の中に目をやったり小高い丘に登ったり。
見かけるのは馬糞と馬糞を掃除してる職員さんなどなど。
おそらく観光協会の人でしょうか。

ちょっと尋ねてみたりもしましたが、毎日移動するので職員さんにも分からないとのこと。



群れはまた探しにきましょう!



ゲートに戻ると、やはり先ほどの3頭が。
すると放牧地を巡回している壮年か初老の男性が車から降りてきて、馬に話しかけていました。

気になって合間に話しかけてみると、長いこと尻屋崎の馬を見守ってきた人のようです。

今日の群れは西の森の向こうの草原にいること。
この3頭は親子ではないこと。
牝馬は今年産んだ子を亡くしたばかりで、群れから離れて暮らしていること。

沢山の話を聞いて、岬を後にしました。



帰りは県道から一本下の海沿いの道へ。
また民宿へ戻るわけですが、今日は夕食もあるのでゆっくりしてたら冷めてしまいます。
今回ブロックタイヤではなくグラベルキングで運用していたので舗装路は結構飛ばせました。
約30kmの道のり、なんとか日没前に市街地に到着。


昨日(もう昨日の出来事です!)夜景を眺めていた釜臥山。

今度は夕日が沈んでいくところを眺めてみる。
同じ町に滞在する旅もたまにはいいなと思ってしまいます。


民宿鈴屋さんの夕飯!

先日の汐ヶ島さんの量に負けず劣らず豪華な食事。
例によって魚好きを伝えていたので海鮮三昧です、めっっっちゃくちゃ美味しかった…!
ちなみにこのお宿の代金は、【初日の素泊まり+一泊二食】で税込9,980円でした。

立地もよくご飯も美味しくて観光案内までしてくれるし、良いところしかないのでは。。


下北の地酒が気になって1本頂きました。
魚介料理と日本酒の組み合わせプライスレス。

次来るとしたら郊外の温泉併設キャンプ場も気になってたんですが、ここも絶対また来たいです。


下北半島の旅はもう一泊だけ続きます!
記事が終わる気配がないけど、それだけ充実した滞在でした。

3日留まるくらいが丁度いい、『キノの旅』でも言ってた。


朝ごはん!
朝っぱらからホタテとマグロキメていいんですか!いただきます。

昨晩食堂にいた長期滞在のお客さん団体は、とっくに朝から仕事に出ていました。
ゆうべ賑やかだった分静かな食卓です。


8時30分、パッキングをまとめてお宿を後に。
またしても食料を頂きました。津軽ではりんご、下北では南部せんべい!
(下北地方を南部地方に含めるかという話は界隈の論争を呼ぶので割愛します)

ツーリング最終日の目的地は尻屋崎に続き10年越しの再訪、恐山
390mと軽めの峠道ですが、帰路の大湊線はいかんせん本数が少ないので時間は限られています。
11時半には駅に戻る必要があるので、現地の見学時間は脚で稼がねば!


恐山街道はやはり信号も街灯もほとんど無いので、時間計算はしやすい道です。

そしてこのヒルクライム、実はほとんど実走体験済み。
下北初日の釜臥山展望台までの道とほとんど被っているのです。


釜臥山へ曲がる道をスルーし、この門をくぐると恐山のカルデラへ一気に下ります。
20%はあろう激坂を下るので帰りはそれをまた登ることを意味しますが……。

硫黄の匂いに包まれながら、見る間に空が開ける景観の変化に富んだ道でした。



宇曽利湖(うそりこ)。

生物の生息を拒む、硫化水素がとけ込んだ強酸性の水。
魚類として唯一棲むウグイは、世界で最も高い酸性度の水に適応しているのだそう。


湖に流入する通称「三途の川」の太鼓橋。

むかし車で来たときは素通りでほとんど記憶にありませんでした。
通行止めはそういうものかなと思ったら、柵は老朽化に伴い設置されたもの。
でも渡れない三途の川というのも、縁起が良さそうというか意味ありげに感じたり。

橋は2021年に耐久性のある石造りのものに架替えられるのだそう。
(公式サイトで修繕費の一口会員を募集しているので宣伝しとこう)

ここは確か寺山修司の映画『田園に死す』にも出てきたような、、と見返したら橋の構造がちょっと違った。
今回は50年ぶりの架替えらしいけど田園に死すはまだ公開から46年。

撮影時期がもっと前だったんだろうか。


脱衣婆と懸衣翁。

ばあさんが奪った衣服をじいさんが柳の枝にかけ、生前の業の重さを量るらしい。
サイクルウェアなのでまあまあ軽いと思います。業は知らない。


自動車用の橋を渡って恐山の境内へ。
結局渡る、三途の川。

自転車ツーリズム推進の影響かこんなところにもサイクルラック(23〜28C用)が!!



サイクルラック(23〜28C用)が!!!!




まあ風強かったし、この方が安全ですね。



 

散策を開始したのが10時ちょうど。

恐山をくまなく散策しようとしたら30分そこらで足りるはずもなく ゚゚(゚´ω`゚)゚。ピー

小さい城郭巡りぐらいの感覚で、ゆっくり写真撮るなら1時間は見た方が良さそうです。
駆け足の地獄道巡りは、こんな雰囲気。




恐山というか下北半島、尻屋崎や仏ヶ浦もそうだけど。
現実離れした景色が多い土地だなぁと来るたび思います。

恐山はその中でも特異で、自然の地形そのままではなくヒトの手が多く加わって成り立っています。
しかしそれらの歴史は不思議とこの山と調和がとれていて、遠い昔からこういうものという錯覚さえあります。
寺が宇曽利湖に合わせて建てられたというより、宇曽利湖がある日寺と一緒に現れたという気がします。


回りきって満足!
順路を抜けて帰路につきました。

順路は観光客への親切というか、有毒ガスのたまり場に人が不用意に近づかないようにという意図がある模様。
現に、立入禁止の看板もその辺に立っていたり。


下り基調の好条件、駅まで爆速帰還できました。
輪行RTAになるかと思いきやコンビニでおやつを買い足す時間があったくらい(大事)

さて、鈴屋さんで貰ったパンフレット類をどうバイクパッキングするかという話がありました。
勿体ぶっといて単純ですがフォークバッグに巻いて一緒に固定しました。
意外と輪行時にも邪魔にならない!

増えた荷物と自転車を肩にひっさげ電車を待ちます。


弘西林道、尻屋崎、恐山、そして収まりきっていない細々としたスポット。
年内に青森未走の地を開拓し切るのがひとつの目標だった9月のライドでした。

白神山地から本州最北を巡ったのがまだ昨日のようですが、ブログに起こしてみると長い道でした。
目標も達成したので、そろそろ西と南へ行かねばと思うこの頃。
去年のもう一つのライドで方角的にはそっちにも行ったんですが、これまた長い記事になりそうです。


なお東京に戻ってから、深浦のお宿にしっかり電話を入れました'`,、('∀`) '`,、
また泊まりにおいでとのことでまた泊まりにいきます。



この特集よかった

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