そらちグルメフォンド2023 / 前日編


夏の一大サイクルイベント、そらちグルメフォンド。
北の大地に移住したこともあり、昔から行きたかったそらちの初参加が叶った。
本編の前に、美唄に前泊した日の模様からお届け。



冒頭述べた通り、ちょっと前に札幌に移住した。

出身地の青森(弘前)で23年、東京暮らしが7年半、そして北の大地へ。東京の旧居もいい場所だったけどやはり雪国暮らしも性に合っているし、札幌は市内の交通も商業も充実していてご飯が安くて美味しい。気候が合う人には本当に暮らしやすい場所だと思う。


北国の本番は冬でもあり、夏でもある。

最近は北海道を含めて全国的に酷暑の年が多いものの、それでも基本的に北海道の夏は短くて涼しい。当たり年であればカラッとした風が吹く心地よい夏日がけっこう多かったりする。

ちなみにこの写真を撮っていた2023年の札幌の夏はというと……記録的猛暑(!)

特にそらちグルメフォンドの翌週がピークで、35℃クラスの日が数日続いていた。北の大地だからと熱中症対策は怠ることなかれ、避暑は天気良予報とにらめっこしながらご計画的に。


札幌から東を目指す


人の住む土地に河川あり、これは札幌市内を流れる豊平川。

両岸にサイクリングロードが敷設されていて、以前住んでいた土地でいうと多摩川のような身近なコース。奥に見えるのは山頂からの夜景で有名な藻岩山。札幌は約200万人の人口を擁する市街地と標高500〜1000mクラスの山が隣接していて、その眺望は日本新三大夜景にも選ばれている。


札幌市街地を抜け、すぐ東隣の北広島市を目指していく。


今回はとある目的地を経由するので、宿泊する美唄のある北東へまっすぐ向かうのではなく東方面から100km弱をぐるっと回り込むコースを選んでいる。車旅を除けば北海道は10年以上前に走ったきりで、行ってみたい場所がまだ沢山ある。


コースを調べていた段階で知ったのは、札幌から北広島にかけて自転車道が充実していること。

上の写真のコースは歩道に敷設されているタイプなので正直広めの歩道……という感じだが、この先ですぐ「陽だまりロード(札幌恵庭自転車道)」に接続される。ちなみに北広島区間の愛称はエルフィンロード。


あ〜〜、大変よい。よいです。

特に夏場はこの日陰がありがたい。
定期的に掃除されているのか路面状況もいい感じ。


人通りはそれなりにあるのに走りにくさは不思議と感じない道。

道幅は広くはないけど、利用者の目線に立って整備されているのを随所に感じた。もっとも走っている最中はそんな難しいことは思っておらず「涼しい〜、信号ないな〜、快適〜〜」といった具合だった。


道なりに進んでいくと珍しいものを発見した。


「自転車の駅」?????

道の駅や海の駅ならよくあるけど、自転車の駅というのは初めて見た。実は前日Googleマップを眺めていたときこの施設名が目に入り、つい気になってこのサイクリングロードをコースに組み込んだのだった。


中に入ってみるとなるほど、レンタルサイクルの受付施設だった。これは自転車の駅だ。

小さいながら座れるスペースもあって、もちろんトイレも設置されている。自販機となりに回収ボックスがあるのも地味にありがたいところ。

このサイクリングロードはエスコンフィールドまでそこそこの長さを快適に走ることができるようで、機会があればまた利用したいなと思った。何となく寄ってみたけどいい道だった。


千歳川を渡ってさらに東へ。

走行距離は33km、正午を回ったあたりで1/3の距離を走り終えた。


本日初のグラベル成分!

暑さを許せてしまう好天のもと、川沿いをのんびり走っていく。ちなみにバイクの選択からも分かる通り、翌日のそらちグルメフォンドではグラベルコースにエントリーしている。


装備についてすっかり書き忘れていたのでここで簡単に紹介。

現在ではメインバイクになったWilierのグラベルロード、JENAに宿泊荷物をバイクパッキング。なるべく重心が下に来るよう着替えやら充電機器やらを配置している。前三角が小さいグラベルフレームでも取り出しやすいマグネット式のコアラボトルは気に入っているけど、現在ほとんど入手できなくなっているのが悩み。劣化したらリングをPuristボトルに付け替えることもできるけれど。

タイヤはグラベルキングの700×43Cを使用。今までいろんなグラベルタイヤを試してきたけど、舗装路込みである程度の距離を走るとなると結局700Cでなるべく太いタイヤを履くシンプルなやり方に落ち着いてきた。

翌日は雨模様らしいので、幅広のフェンダーでしっかり雨対策。


撮影機材はいつも通りたすき掛けした一眼レフと、サイクルジャージのポケットにGRIII。

最近はこの構成が個人的に王道で、スマートフォンより迅速な撮影ができるGR × 一眼カメラならではの高画質な望遠の組み合わせで何でも撮りながら走っている。


野鳥を見ながら目的地へ


カメラが一眼だけなら16-85mm(フルサイズ機でいう24-130mm相当)が一番便利だけど、広角をGRに任せると55-300mmをつけっぱなしにすることができる。クロップ機能も使うとフルサイズ換算の画角はなんと約600〜800mm相当に。

望遠レンズを使いたい理由は、主に野生動物の記録。

自転車は撮りたいものを見つけたときいつでも気軽に停車することができるのが他の交通手段にないメリットで、担いだり道端に寄せたりできる点も含めると唯一無二の移動手段。400g台のコンパクトな望遠ズームはサイクリングとの相性がとても良い。


上の写真はアオサギで、ジブリの新作でも話題になっていた鳥。本州では一年中見られる鳥だが、北海道では夏鳥。

さらに北海道のサギ事情について話すと、アオサギではない白鷺系は2010年代まで珍しい鳥だった。実際いまの土地に移住してからダイサギやチュウサギは見かけていない。いまの自分にとってのサイクリングは、そういった生き物の分布を記録する趣味も兼ねていたりする。

ひとつ前の写真はトビで、種としてはふつうに見られる。

上からノスリ、ハイタカ、ハチクマ、ミサゴ(すべて別日撮影)。
慣れると見分けがついてきて楽しい。


しかし猛禽系はトビかと思って目を凝らすとノスリハイタカハチクマ、ミサゴだったこともあるので、遠目で分からないときはとりあえず撮っている。

河川敷で空が広くなったこともあり、すっかりバードウォッチングモードに。


こちらはカワラヒワという鳥で、やはり珍しい鳥という訳ではない。しかし季節に合わせて痩せた夏羽がいかにもこの日の気候に合っていたのでついつい撮った。一般的に野鳥観察のシーズンといえば渡り鳥がやってくる冬場だけれど、北海道はむしろ夏に本州から渡ってきて繁殖する鳥も多い。

やはり北国の本番は冬でもあり、夏でもある。



呑気にグラベルと野鳥撮影を楽しんでいたらパンク発生(!)

尖った石か道に埋もれていた異物を踏むかしたらしく、ブシューといかにもなパンク音が鳴り響いた。しかし落ち着いてパンク位置が下に来るようタイヤを回転させると、幸いにもシーラントで塞がってくれた。いつもベタつきに苦労させられるシーラント、名誉挽回。


13時を回ると夏の気温もいよいよ本領を発揮してきた。

というか、サイクリングロードを抜けて時間も経ったけどまだあんまり進んでない気がする。果たして目的地にたどり着けるのか、美唄の宿で寝ることはできるのか。しかしこのとき、それよりも重大な問題が差し迫っていた。

サイクリングロードや川沿いにコンビニが皆無だったことによる空腹である。


時刻をちょっと気にしつつも空腹には変えられず、ついでに暑いのでセイコーマートでアイスを購入。

本当はここで昼食にするつもりだったけど、とある看板が目に入ってもう少し先まで行ってみることにした。


「名物 赤字丼」

街中にも畑の中にもこの看板がチラチラと登場していて、サブリミナル広告よろしくまんまと興味を惹かれてしまった。マップでコンビニの位置を確かめるとルート上に店があることを知って、この導きに従うことにした。


長沼町のいわき食堂に到着。


いわきのメニュー。

当然注文するのは……


赤字丼!!!!!

タレのしみた白米と海老の衣が空腹によく染み渡る……ボリュームに文句があろうはずもなく、ほどなく完食。5尾も海老が乗っていたらそれは赤字スレスレになってもおかしくないけど、北海道で1,700円の丼物はなかなかごちそう価格(もちろん内容からすると全然高くはない)。

提供する側もされる側も経済的に響く赤字丼の真髄を感じつつ、満足して店を後にした。おいしかった。


昼食でちょうどいい具合にピークの暑さを回避して、南中をだいぶ過ぎた太陽を横目にもう少し東へ。

美唄はまだ遥か北だが、ようやく中間の目的地に到着した。


一級河川 ヤリキレナイ川

ヤリキレナイ川である。長さ5kmと小流ながらなぜか北海道で最も有名な川。一度来てみようかなって。


川の名前の由来には諸説ある。

① アイヌ語の「魚の住まない川(ヤンケ・ナイ)」
② アイヌ語の「片割れの川(イヤル・ケナイ)」
③ 度重なる氾濫からやりきれない思いをした明治時代の住人が名付けた説

調べても由来がはっきりとしないところもやりきれない。


別アングルから見たヤリキレナイ川。

夏の植生に覆われてどこが川なのか分からないところもやりきれない。


なんとか水の流れが見えるところまで来てみると、たいへん少ない水量。

そういえばネットでは看板の写真しか見たことがなかったけれど、名所としては味わい深いやりきれなさの漂うスポットだった。通りかかった人はぜひ。



空知地方をひたすら北上


満足したので進路を北へ、目的地までは残り50km弱。

由仁町の農耕地帯をゆるゆると進んでいく。


実は長沼町の時点で空知地方に入っている。

広大な土地の農作業を眺めながら作物が各地のスーパーに並ぶ様子を、そして翌日のそらちグルメフォンドのグルメ要素に思いを馳せていた。


岩見沢も通過。

あの観覧車のある辺りのいわみざわ公園が明日のスタート地点となる。


そして定期的に訪れる野鳥タイム。遠目でなんだろうと思ったらとりあえず撮る。

ムクドリは道央でもメジャーな鳥のひとつとされているけれど、東京に住んでいた頃ほどは見かけない。札幌圏では人工的な環境を利用して越冬しているらしく、まとまったグループで行動しているので観察できるエリアに偏りがあるのかもしれない。


特別変わったところのない道の駅に見えるけれど、ここはちょっと懐かしかった。

2012年に北海道を縦断したときに立ち寄った三笠の道の駅だった。自転車旅をしていると、途方もない距離を走った先でふと線と線が繋がる体験をすることがある。まさしく醍醐味のひとつ。


ようやく美唄入り!

完全に日が傾く前に到着できた。余裕をかまして(?)おかわりグラベルを散策しつつ、大学のサイクリング部の先輩ことつっちーさんのお宅へ。他のメンバー(サイクリング部OB)も既に集合していて、うち4人がそらちグルメフォンドの参加者。

明日の朝はここから岩見沢を目指す。


つっちーハウスのハイエース(自転車積載仕様)。万全すぎる!


荷下ろしも済んだところで「ゆ〜りん館」で汗を洗い流し、買い出しも終えて再びつっちーハウスへ。


そらちグルメフォンド前夜祭!

なぜかライド参加者の倍の人数が集まっている。


名物の焼き鳥を空腹に流し込んでいく。グルメフォンドは既に始まっていた!

美唄焼き鳥の発祥は1950年台、美唄市内の焼き鳥屋だったという。当時は廃棄されていたモツ串が炭鉱労働者から人気を博し、これが名物となったそう。味付けは塩こしょうで、長ねぎではなく玉ねぎを刺しているのも特徴。


湯上がりの心地よさと食事とほどよい疲れとともに、この日はたっぷり寝た。

本編に続く。



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