裏磐梯お泊りツーリング(前編)

「5人用テント買ったからキャンプしない?」

道具をひとつ買ったらまず使ってみなければならない。これは義務である。

カメラなら近所でテスト撮影。自転車なら最寄りのコース。
そしてキャンパーなら、キャンプ場と連休と予定の合う仲間を確保する。
なんて大変な趣味だろう!喜んで協力するべく福島の山奥へと向かったのであった。


もともとGWに日光でキャンプする予定だったのが、雨天でずれ込んで5月も後半。
今回の目的地は会津若松から磐梯山の北へ回ったあたり。
北千住の始発に乗れば、大体お昼には会津若松に着く計算。
まあ3時半くらいに家を出れば間に合うんじゃないですかね〜〜!

普段より荷物が多いなか、やっと支度に取り掛かったのが前日23時頃(この時点で何もかもがおかしい)
「起きられないなら寝なければいいじゃない!!!!!!!!」
実際は移動時間で仮眠とったけど。

早朝とはいえ都内横断。渋滞はなくとも信号と踏切の多さで郊外を走るときの倍は時間がかかる。
それを見越しての出発だったが、ここで通り雨と強風が襲いかかる。
北千住に到着したのは始発10分前……10分前!?
飲み明かした若者集団をよそ目に超高速で自転車を分解する。



〈プシュ〜ッ!!!!!!!!!〉



( ゚д゚)ポカーン



むしろ褒めて欲しい。10分でホームに辿り着いたのだ。
大量の荷物を一瞬で解除して輪行袋に詰め、駅の階段を駆け上って建物奥の東武改札を通り階段を駆け下りる。
そしてあと5秒というところで、無情にも電車はドアを閉めてホームを後にした。



ダイヤをめちゃくちゃ調べたら特急で似た時間に到着できるらしい。焦ったあせった(ノ´∀`;)

ひとまず鈍行に乗り、途中から乗り換え。
東京から栃木へ移動する間はポツポツ雨も降っていたけれど、日光まで来るとメッチャいい天気になってきた。
というか今日は福島方面より日光の方が天気がいいらしい。

車窓から見てるだけじゃ勿体無い景色が矢のように過ぎていく。
いっそこの辺で下りてしまいたい気分。






この辺でいいかな。




輪行旅、終了!!!!!!!!

去年も通った道だけど、あのときは11月。
山々が新緑を帯びているのを見て、いてもたってもいられなくなってしまった。
会津高原尾瀬口で下車。ここからはゆるゆる下っていくだけだ。



駅を降りると涼しい風。いや寒い!!

初夏とはいえ標高700m以上あるのだ、しかも風が冷たい。
この風がちょっと誤算で、かなり猛烈な北風だった。

進路は北。ゆるい下りだというのに30km/h以上を維持するのすらしんどい。


まあ、いいか。
特急のおかげで概ね予定通り進めているし、無理に踏んでも仕方ない。
去年、会津から日光まで走った道を今度は逆向きに辿っていく。

道は行きと帰りで顔が違う。
しかも前回は大半が夜道だったので、見えるものがガラッと変わりまるで違う道のよう。



これで風がなければと思いつつ、何だかんだこの途中下車は成功────のはずだった。





去年の旅で上の写真を上げたことをご存知だろうか。
国道18号のこの区間にはトンネルがある。
歩道は最低限の幅すらなく、車道は荒れ、しかも日中の交通量はそこそこ。

このトンネルの存在をすっかり忘れていたのだ。
長野(入山トンネル)のトンネル内分岐ほどの恐怖はないけど、通りたくないトンネルの条件がこれほど揃っているケースもそう多くはない。
さらに寝不足。避けられるリスクは避けていきたいのが正直なところ。

ん?あんなところに橋があるぞ???


大川ダム湖を渡る橋。
西岸にはトンネルと国道が整備されているが、そういえばマップ上では東岸にも道がある。
そうだ、国道が通る前の旧道は生活道路として残っていて、そっちはトンネルがないはず。
事実Googleマップもそう示している。

これよりトンネル迂回作戦を始めます!!!!



ある程度民家を通り過ぎたたあたりで人気が全く無くなった。

さっきまでトラックやバスがガンガン通っていた道とは対照的な静けさ。

心なしか舗装も荒れてきた。
使う人が少ないのだ、整備が行き届かないのも仕方ない。
人の住んでいるところまで少しの辛抱。


舗装路の終点は、右手に墓地があった。進行方向には林道。
墓はお寺というより、地域の人がときどき掃除をしているような場所。
新しいお墓はなく、全てうっすら苔むしていた。

車が一台自分を追い越して、墓の前で止まった。
どうやら墓参りのようだ。乗っていたおばさんが車を降りるタイミングで追いついたので、この道の先について聞いてみる

「この先??ここ最近クマ出たから気ぃつけた方がいいよォ」


「ンンンンンンンンン゛〜〜!!!!!!!!」



いやまさか、ここまで林道だと思わなかったんだもん。

時間帯から遭遇率は高くないと見て、砂利道ならギリギリ走れるしひとまず直進。
たった数キロだしだんだん道も綺麗に……




綺麗……緑が綺麗…


軽トラぐらいならたまに通るかもしれないけど、あきらかに人が通った形跡がなくなり始めてる。
しかも地形的にヘタに奥まで行くと電波が途絶え、マップすら見れなくなる可能性があった。
引き返そう。

「結局ここはトンネルを通るしかないのかぁ…」

結論から言うと、本当は林道もトンネルも通る必要はなかった。
単純なミスコースをしていたのだ。
青が正規のルートで、後日ストリートビューを確認すると最後まで舗装路で繋がっていた。

「東岸に旧道がある」と予測した時点では、判断を誤っていなかったのである。
そして無事に林道を下っていれば、スマホでこのルートにも気づいていたことだろう。


休憩。国道が次第に眼下の景色となっていくあたりから、ちょっと変だなとは思ってたよね!'`,、('∀`) '`,、
高いところで景色を眺めていたら気分も落ち着いてきたので、慎重に下り始める。

しかし。




〈バシュウゥゥ〜ッ!!!!!!!!!〉





こぶし大の鋭い石が散乱する区間で、今度は後ろ荷重で下っていた。
23Cがパンクしないわけがない。

時間と体力とタイヤを犠牲にして、先ほど越えた線路近くまで降りてきた。



見事なまでのサイドカット(ノ∀`)アチャー


タイヤブートなんて勿論携帯していない!それがどうした!
もう正規ルートとかどうでもいい、早くここを脱出してキャンプをするぞ!!




ここは線路!あそこに駅!やることはひとつ。


輪行旅、再開!!!!!!!!
ここでようやく、正常な判断力を取り戻した模様。
ダイヤのタイミングにぴったりだったのが不幸中の幸いだった。




会津若松駅では定期運行しているSLがちょうど出発するところだったのでお見送り。
JRに乗り換えて猪苗代駅まで輪行した。
さて、問題なのは今回の目的地。

鉄道でアクセスできるのはここまでで、磐梯山の向こうまではあと15kmの上りがある。
パンクしたままの自転車を押していたら3時間はかかる道のり。どうしよう。




解:(強引に)パンクを直す!




初のサイドカット応急修理、どうやら上手くいった模様(;'∀`)-3
レシートの類は出発前に捨てていて道中でも取っておかなかったので、間違えて買って余った切符をタイヤブート代わりに当てて走った。

駅からしばらくは快走、そして裏磐梯こと磐梯高原への上りに差し掛かった。
荷物のせいか空気圧が低めなせいか、普段なら軽く登れる坂でも速度は出ない。
斜度が変わらないのにどんどんしんどくなる。



一体なにが…パンクが再発したわけじゃあるまいし…







〈スコォ────────………〉







ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛〜〜!!!!!!!!



やはり駄目だった。なおパッチではなくチューブ交換済み。
・切符のカドがチューブを傷つけた説
・タイヤが穴だらけになってた説
etc...

残り5km。
穴は小さいから5分走ってはポンピングを繰り返し、今日の宿へと向かう。
TOPEAKの極小ポンプではこの反復が大変だった。でもCO2ボンベじゃなくて良かった。
年に1回あるかないかのお守りとして持ち歩いていたけど、本日に限って大活躍。

予定時刻はとっくに過ぎてる。日も傾いてきた。
あとは駐車場からキャンプ場までの道だけ!これは楽勝d


 またしてもダート_( ' ∀ `」∠ )_ ア '`,、 '`,、

なんにせよ本日の目的地に到着したから良しとしよう!五色パラダイスキャンプ場。
裏磐梯屈指のスポットらしい五色沼のほとりにひっそりと佇む林間キャンプ場だ。
そう、あくまで五色沼が徒歩圏というだけで湖畔キャンプ場ではない。

と、到着を待ってくれていた友人2人とここで再開を果たす。のぶりど氏と葛見さわ氏。
2人とも青森にいた頃からの付き合いで、宮城と東京の中間でキャンプしようという運びになったのだ。
今日はおフロ入って肉食べて寝るだけ。明日行く五色沼が楽しみだ。



今回はキャンプ用品も車もほとんどさわ氏提供。

全国の滝壺を訪瀑しているはずだが、最近彼のキャンプ熱がすごい。
テントとかデカすぎて前室を駐輪場にできるレベル。


露天風呂でほっこり……とはいかず、人生で最も寒い風呂だった。
そもそもの気温が低い上にお湯はかろうじてお湯である程度。
男3人が源泉を譲り合う絵面はそれはそれでハートウォーミングだけど心より身体を温めたい。切実に!




これが人類の力だあああああ!!!!!!!!

このサイズの焚き火台があっても風が吹くとまだ寒い。
実はこれを見越して雨具をポンチョにしていた。
前部だけ暖気を取り入れて風をシャットダウン。するとこれが暖かい!




予報通り雨もときどきパラついて、焚き火台を移動したり前室にモノをしまったりとなかなか忙しい。
にもかかわらず写真が残っていることからお分かり頂けるだろうが、私何もしてない。






でも飲むのと食べるのはしっかりやるぞ!!!!





花火アーティスト達の傑作集。私のはどれでしょう?

キャンプの夜は短い。

飽きる暇もなくあっという間にいい時間になってしまった。
明日は2人と五色沼を散策しにいく。
テントの中で迎える朝にわくわくしながら、ほどなく眠りに落ちた。つづく





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