初めての青森ツーリングガイド(2020加筆版)

「遠い!でも青森行ってみたい!」そんな声を、ときどき耳にすることがありました。
物理的な距離はもちろん、そもそもどんな日程で行くかが難しくも楽しいのが長旅というもの。
GW、北国の桜も頃合いという季節。おすすめスポットも交えつつ道案内の記事です。



ツーリングガイドと仰々しいタイトルをつけました。
でも、旅は自分で計画するのも楽しいし、下調べで予想もしなかった名所を発見するのも醍醐味!


だから既に行くつもりの人は、いますぐGoogleマップとルートラボだけ開いて荷造りを始めるんだ!と言いたいところだけど、遠方からとなると行程や交通費の計算も大変なところ。
青森の交通機関や地理的な感覚をちょっと掴んでおけば、行程を組むのが楽になるかもしれません。

そんな訳でまずは「青森は西と東に分ける」というところから。

実は広い青森県


東北は首都圏からの交通の便が福島・仙台まですこぶる良く、飛んで北の大地には空の便が充実している札幌。

そのどちらからも同じくらい遠い青森という土地は、おそらく大抵の地域からの観光客にとっては「はるばる」やって来る感覚かと思います。
せっかく来たからには奥入瀬渓流、祭り、本州最北端の大間と網羅したいところですがここは冷静に。
お隣の北海道や岩手の巨大さに比べると陸地の狭い青森は1泊2泊で回れそうな気もしてきますが、青森は意外と広いです。
しかも県の中央を分かつ八甲田山系に陸奥湾。ここを横断するだけで実は結構時間を要します。


 イメージとしてはこんな感じ!
ちょっと国土地理院の色別標高図を利用して描いてみました。自動車専用道は割愛。

特に西側の秋田県に跨る白神山地にいたっては海沿い以外ダートを行くしかない、徹底した山っぷり。
長野や四国ほど険しい山ではないとはいえ、標高の低い道も長期間冬季通行止めとなるのも特徴。

ちなみにダート区間と冬季通行止め区間・解除の目安については以下の地図の通り。
季節外れの降雪で突然通行止めなんてこともよくあるので、ちょっと余裕を見た方がいいかも。
最新情報は要チェック。
青森みち情報を参考に4月上旬解除=「4上」、4月中旬解除=「4中」(以下略...)と記載
※主要道路しか線を引いていないので、地図サイトに載っている道で封鎖されている道が他にもあります。


こうして見ると「なんとなく東西の行き来が大変そう!」という印象があるのではないでしょうか。
4月下旬まではそもそも八甲田山系を超えること自体が出来ないですし、開通後も1000mぐらいの山越えで平地から平地まで余裕で100km以上のライドになります。

なので短い日程の場合は青森県の西(=津軽地方)東(=南部地方・下北地方)のどちらかに絞って行程を組むのが個人的なオススメだったりします。
もちろん時間をたっぷりとれる方、走力に自信のある方は三地方制覇もぜひ!


改めて調べながら思ったんですが、やはりGWを境に一気に通れる場所が増えますね。
ちなみに八甲田山の雪の回廊などが目的なら別として「雪解け直後はあまり道がよくない」というのも書いておきたいところです。

2月の津軽地方。たまに天気のいい日が続いてアスファルトが見えることもあるけど、大体こんな感じ。

雪国の除雪は路肩に大量の雪を積み上げます。
その積み上げた雪には砂利や砂埃がたくさん入っているので、除雪の行き届いている地域ほど雪解け時期には路肩に塵が残ることになるのです。
これはお世辞にもロード向きとは言いづらい('∀`)アハハハハ


雪の多い日本海側(津軽地方)でも平地なら3月半ば頃からロードバイクで走ることはできますが、路肩を快適に使えるようになるのは早くとも雨風が流してくれる一ヶ月後といったところ。

さて行きたい場所に応じてシーズンを把握したところで、さっそく地方別の名所紹介を!

津軽・南部・下北のスタート地点

せっかくなので鉄道マップも用意してみました!

(◉…新幹線停車駅と最寄りの主要駅 ●…主な始発駅 ■…その他の一部始発駅)

何から何まで載せると長くなってしまうので、色々端折ってますがご了承を。
ここでは大雑把に、"野辺地"から西が「津軽地方」、東が「南部地方」。
そしてくびれの特徴的な下北半島北部が「下北地方」というそんな感じの括りで。

ちなみに東京から新青森までで新幹線で17,350円という運賃がかかりますが、700km超をたった3時間ちょっとでショートカットできると思えば安いという説を唱えたい!()
実際のところはJR東日本えきねっとの「お先にトクだ値」料金でいつも25%引きで購入しています。
キャンセル料は微々たるものなので、とりあえず休みがとれそうな日に目星をつけて席を押さえておくという方法。

また、特に学生の方で交通費が限られていて18きっぷ旅をする場合、ギリギリ都内から青森まで着けないことはないです!
最長で弘前〜神田(1泊)〜尾道という長距離を鈍行で輪行したこともありますが、体力と時間を使えば行けないことはないです(過去の自分に言い聞かせるように)


さて輪行込みの日程を考えるとき、地方旅につきものなのは終電の早さ。
帰りの便はもちろん、宿の確保やトラブルの対処で街中まで戻る手段は考慮するに越したことはありません。

弘前-青森-八戸を接続している奥羽本線や青い森鉄道は、割と遅い時間まで電車があります。

ただし場所によっては日が暮れると電車がなくなってしまう駅も。

たとえばマップ中で津軽半島の北端にあたる三厩(みんまや)駅などは17時台で最終が出てしまいます。
他にも前もって調べないと行きたい方向にエスケープできない!そんな駅もあるかと。
もちろん輪行旅が得意な人なら抜かりないところですが、不慣れな場合は事前調査をお勧めします。

津軽地方のあれこれ

※弘前城天守は石垣修復にあたって写真とは別の場所へ移転中。100年ぶりの工事なのでそれはそれで珍しいかも。

そもそもこの記事を書こうと思ったのは、ちょうどGWで青森は桜の観光シーズンだったから。
特に弘前城は、同じバラ科植物のりんごの栽培技術を応用した桜の剪定や、現存最古のソメイヨシノを始めとする長寿な樹が多いことから是非訪れて欲しい桜の名所。


桜まつり期間は新宿並に混雑するので(!)、他の観光地と同じで純粋に桜の景色を楽しむには早朝がお勧め。
混んでる期間だと自転車は駐輪場へ案内されますが、早朝なら普段通りでおとがめ無し。
日中でも、特に人の多い出店エリアを回避すれば自転車を押して散策できます。

城周辺は意外と駐輪設備が少ないので城内の駐輪場を利用することになるかなと。
施錠さえすれば滅多に盗難も起きない場所ですが、電灯の柱を利用して地球ロック可能です。
いっそ徒歩散策と割り切るなら、弘前駅前の地下駐輪場は管理人も見張っているので長時間駐輪にお勧め。


長旅で短い桜のタイミングを逃したら、そんな声も聞こえてきそうですがここの桜はちょっとだけ長く楽しめます。
というのも、見出しにしていた花筏

城を囲うように桜に覆われた外堀には、毎年歩けそうなほどの花びらが敷き詰められます。
もし散り際の葉桜を見かけたら、むしろベストなタイミングかもしれません。


GWを過ぎてしまったら、岩木山の麓を一周する通称「ネックレスロード」に行くという手も。

その名前の通り、麓を周回しながら数千本のオオヤマザクラが5月中楽しめます。
県道3号・30号沿いの桜は若い樹も多く密度的に少なめですが、岩木山総合公園という場所の裏手にあたる一本向こうの道の桜並木が最も見ごたえがあります。



さらに弘前より西には、広大な白神山地が広がっています。
津軽と下北の最端へ / 白神ライン編

42kmに及ぶ未舗装路、白神ラインは国内でも有数のロングダート。
この一帯の原生林はMTBやグラベルバイク向けのコースなので、日本海側のアクセスは岩木山方面への迂回が基本になります。

津軽の日本海側。十二湖の青池はおすすめしたい場所のひとつです。


青く見える池や湖は全国各地にあって、ひとつも同じ色がないというのが不思議なところ。
2018年に訪れた福島の五色沼は絵のようなエメラルドグリーンでしたが、ここは暗く、そしてとても透明度が高い青色。

正午あたりに行くと光の反射が良いとされ、新緑の時期は水面に落ち葉も少ないので見頃です。



他にも津軽半島の知られてない岬巨大廃墟もお気に入りスポットなのですが、尺が尽きました。
色々記事を書いていたので気になる方はぜひ。

津軽の先っぽ

あと山深いランプの宿もぜひぜひ。

南部地方のあれこれ

国道104号・しらはぎライン。面積のほとんどを山が占める田子町では、にんにくの生産が非常に盛ん。

りんごで知られる青森県ですが、ここ南部地方では気候の違いからあまり栽培されていません。
逆に言えば、それ以上に特産品に強みを持っているということでもあります。

そう、南部の中心・八戸には日本有数の漁港があるのです。

市場に着くのが早朝すぎてクラッシュ(=目的地が開店していない現象の総称)した様子。

海の幸を楽しむなら館鼻岸壁という場所で毎週日曜に国内有数規模の朝市が開かれています。
またそれ以外の日も、代表的な市場の八食センターなど海鮮巡りの充実度は北海道に引けを取らないレベル!

北国の海産物で、個人的に好きなのが「かすべ(かすぺ)」と呼ばれるエイのひれ。
鮮度がいいものはお刺身でもいけますし、煮付けが定番。軟骨コリコリでうまいです。
エイヒレといえば干物のイメージですが、未加工だと鮮度が落ちやすくてなかなか遠方へ流通しないんですよね。

農産物の名物も多く、現地に行かないと食べられないグルメが豊富なのも南部地方の魅力。


同じく南部、七戸十和田駅からのアクセスが最もいいのが奥入瀬渓流!

ここは初めて青森へ訪れる人が訪れる場所トップ3に入りそう。
悪天候という条件にもかかわらず、遊歩道でも何でもないただの国道を走るだけでも太古の森感が半端ない。


体力があればそのまま八甲田山や十和田湖を周遊して、青森方面へ下るというのも。
津軽側にも酸ヶ湯(すかゆ)温泉といった名湯があって ここだけの話混浴。混浴です。

下北地方のあれこれ


下北を一言で言うなら「本州と北海道の狭間」


そう、なんというか北海道っぽい。たぶん走ると伝わる。
畑と牧場があって、信号がなくて、でも北海道のような牧歌的で雄大な風景とは質が異なる。
恐山の物寂しさやマグロ漁船の勇ましさ、大湊の軍港、寒立馬、いろいろな生き物の北限。
むつ市街とその周辺は1泊程度で結構回れるのが良いです。

津軽と下北の最端へ / 下北編




下北半島は内陸が山がちでダートもある*ので、海沿い時計周りか逆周りで大間を目指すという場合が多いでしょうか。
もし津軽海峡に面した海峡ラインを通るなら、非現実感がたっぷり詰まった仏ヶ浦は山道を歩いてでも行きたい場所。

※ダート区間だった"あすなろライン"は2019年より舗装工事が開始され、現在通行止め(2020.3.8追記)



ここの巨岩・奇岩は数といい大きさといい、ひとつの世界を形成するのに十分過ぎるスケール感。
実は今回紹介した中でいちばん好き。

寄り道するにはちょっと険しい遊歩道を歩きます。詳細はこれも別記事に!
下北半島ライド

まとめ


ラーメン情報、隠れビュースポット、サイクルトレインやら祭りやら沢山あるのですが、書き始めるとキリがないのでこの辺で一区切り!
冒頭にも書いた通り旅の楽しみは自分で見つけたいという気持ちもあったりするので、丁寧にネタバレしてしまうのも躊躇われる葛藤があったりなかったりします'`,、('∀`) '`,、

特にここ数年知らない土地を巡って、初めての好きな景色に出会うたび「もしかして自分の見知った風景も、誰かにとっては知らない景色なんじゃないか」とそんなことを考えたりもしました。
ちょうどいいこの季節、一本纏まった紹介を改めてしてみようと思ったのがきっかけでこういう記事を書いてみました。


ふと連休ができたら、ちょっと遠出してみたくなったら。


本州の北の端っこという選択肢、ぜひ試してみて下さい。


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